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東京2020大会と共生社会
- 7月23日からおよそ2週間ずつ、2020東京オリンピック・パラリンピック大会が開催されました。前例のない新型コロナウイルス感染拡大の中での大会ということで賛否両論ありましたが、スポーツドクターのボランティアを募っていたこともあり、医療スタッフとして参加しました(写真@)。
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東京2020大会では、選手用(試合会場と練習会場 写真A)と観客用(写真B)にそれぞれ医務室(写真C)があり、医師2人看護師1人の2交代シフ卜で朝7時ころから夜12時すぎまで熱中症や骨折疑い等の対応に当たりました。選手は大会1週間前から会場で練習を開始するので、競技終了日まで約3週間各会場に医療スタッフを配置するために、医療担当のチーフスタッフは調整等にかなり苦労したようです。
- 私は、幕張メッセ会場のオリンピックのレスリング、パラリンピックのシッティングバレー(写真D)の観客用医務室にて、主にボランティアやスタッフ等の対応でそれぞれ1日ずつ担当しました。さらにパラリンピックの選手対応ドクターが足りないと協力要請があり、急遽パラテコンドーの試合会場のスタッフとして1日対応することになりました(写真E)。
- 試合会場では、まず競技前に医療スタッフ全員で意識喪失、頸椎損傷等の負傷選手への緊急処置及び搬送訓練をスムーズに行えるよう繰り返し練習を行います。(写真F)。試合中はコー卜脇の最前列に医師・看護師・理学療法士が待機しており(写真G)、選手が受傷した際はその場で応急処置を行い、2分間で試合続行できるかの判断を下します。直接勝敗に関わってくるので責任重大でしたが、大きなトラブルはなく順調に試合は進み、担当シフトを終えました。(写真H担当ドクターと共に,右端 院長)
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コート脇で待機していると、選手の入場時の緊張感や試合後の勝者の安堵感、敗者の悔しさなどがひしひしと全身に伝わってきます。勝敗に関係なく応援し、思わず拍手を送る場面も多々あり、ひたむきに限界に挑むパラアスリートの姿に強く感銘を受けました。やはり、テレビ越しに観戦するのとは別物で、コロナ禍でなければ多くの人にこの感動を与えられたと思うと、残念でなりません。
パラスポーツの試合を近くでみるのは初めてでしたが、どんなハンディキャップがあろうとも、どの選手も国の代表としてたくさんの思いを背負い全力で競技に臨んでいました。なかでも、難民選手団の選手は、試合中に前腕を骨折しましたが最後まで痛みに耐え、棄権することなく競技を終えて緊急搬送されました。ただ彼は帰る国がないので、その後の治療が気懸かりです。厳しい国際情勢の一端を垣間見た一日でもありました。
今大会、日本で初めてパラスポーツの試合が民放で中継放送され、共生社会へと着実に近づいているように感じます。医療ボランティアを通して、改めて思いやりと優しさを持って障害者と共に多様性を認め合う共生社会の大切さを実感しました。これからも東京2020大会を契機にダイバーシティに富んだ社会へ身近なことから取り組んでいきたいと思います。