▲
Top
-
膝の痛み
膝の痛みは年代で異なりますが、中年以降に多いのは変形性膝関節症です。人間足から弱ると言いますが、私たちは2本の足で全体重を支えているのですから、膝にかかる負担も相当なものです。ちなみに平地で普通のスピードで歩くときには、瞬間的に体重の7倍の力が膝にかかるといわれています。このため膝はとても故障しやすく、負担をかけすぎると痛みが生じてきます。
膝に痛みを起こす病気はさまざまありますが、中年以降の女性に圧倒的に多いのが変形性膝関節症。原因は加齢による膝関節の老化ですが、それに追い打ちをかけるのが肥満です。予防するためにはウェイトコントロールが大切ですが、まず膝の筋肉を鍛えることが一番です。
膝の痛みは年代によって異なります。10代は成長期の痛み、いわゆるスポーツによる成長痛、20〜30代はスポーツによる外傷で、半月板損傷、靭帯損傷が多くみられます。また、雨が降ったり天気が悪いと痛む、気温の変化で痛むという症状もあります。これは、成長痛の延長とは違いますが器質的な問題はなく、時間がたつと自然に治まるようです。お皿(膝蓋骨)の噛み合わせが悪く何回も外れる反復性膝蓋骨脱臼の人もみられます。40代以降の中高年に圧倒的に多いのが変形性膝関節症です。
-
変形性膝関節症の症状
主な症状は膝の痛みと水がたまることです。症状が進むと、膝の動きは制限され、膝が完全に伸びなくなります。また。脚変形が生じます。変形性膝関節症の初期症状としては、まず膝がこわばる感じがし、立ち上がったり、歩き始めるときに膝に痛みが生じます。症状が進むと膝を動かしている間はずっと痛みが続くようになり、階段の上がり下がりがつらい、正座ができない、歩けないというように悪化していきます。
体型的にはO脚の人がかかりやすいという面があります。O脚の人は、もともと体重のかかる線が膝の関節の内側を通るため、軟骨が膝の内側からすり減りやすいためです。ですからO脚の人が変形性膝関節症になると、内側の軟骨がますます減り、さらに脚が曲がり、O脚がひどくなるという悪循環に陥ることもあります。- 初期
- 立ち上がり、 歩きはじめに膝が痛む。休めば痛みがとれる。
- 中期
- 歩くと膝が痛み、正座、階段の昇降が困難。動作が不自由。
- 末期
- 変形が目立ち、膝がピンと伸びず、歩行も困難。日常生活が不自由。
-
変形性膝関節症の原因
原因は関節軟骨の老化、外傷、肥満、素因(遺伝子)などが考えられます。関節の老化が原因の病気で女性に多くみられます。原因は骨の表面を覆う軟骨の水分が少なくなって弾力性が失われ、すり減ってくること。ひどくなると軟骨がまったくなくなって直接、骨と骨がぶつかるようになります。同時に骨に力がかかり、よけいな骨が棘のように出っ張ってきたりして変形を生じます。そのため変形性膝関節症と呼ばれます。この年代は骨粗鬆症が気になりますが骨粗鬆症と変形性膝関節症とは明らかな関係はありません。
-
変形性膝関節症の診断
触診、X線撮影、必要によりMRIなどの検査をします。問診や診察、特に触診で膝関節内側の圧痛、動きの制限、腫れ、変形、関節の不安定性などを調べ X線(レントゲン)撮影 をして診断します。 必要によりMRIなどの検査もします。炎症初見が強く、関節穿刺で関節液が濁っているときは偽痛風や関節リウマチ、化膿性膝関節炎などの合併を確認するために血液検査をすることもあります。-
正常な人のX線写真
膝関節の軟骨や半月板が衝撃を和らげるクッションの役目をしている。 -
変形性膝関節症のX線写真
膝関節の軟骨や半月板がすり減り衝撃を和らげることができず大腿骨と脛骨が直接ぶつかっている。
-
-
日常生活での心がけ
普段から、できるだけ膝に負担をかけないよう注意しましょう。太り過ぎない
ウェイトコントロールを心がけましょう。体重が重くなると膝に大きな負担がかかります。体重が3kg増えると、歩くとき膝に9kg以上の負担が加わります。階段の手すりを利用する
無理をせず、関節の負担を避けるため、階段などは手すりを利用しましょう。杖を使う
杖をつくと膝の負担が防げます。長歩きしない
歩くことはいいことですが、痛いのを我慢して歩き過ぎてはいけません。痛み始めてから一生懸命歩くのは逆効果です。痛みが引いたらウォーキング
痛みが感じられなくなったら、膝に重みをかけるためのウォーキングをしましょう。痛みがあり安静にしていると膝が弱ってしまいます。そこで歩くことで徐々に膝に重みをかけ、膝の周りの骨を元の強さに戻すのです。
ウォーキングは1週間に最低2回程度、やすまず20分間くらいやってください。ただし、歩く場所は階段や坂道は避け、平地にしてください。靴は専用のウォーキングシューズがいいでしょう。山登りは避ける
山道や坂道は膝に負担をかけるので、膝が痛い方には勧められません。最近、中高年の登山が流行っていますが、無理をして膝を痛める人も多くみられます。無理なランニングは避ける
膝に衝撃がかかりますので、変形性膝関節症の人にはあまり勧められません。痛みをみながらの速歩き程度にしましょう。冷やすとき、温めるとき
痛みがあり腫れているときは冷やします。慢性的な痛みには温めるのが有効です。入浴
お風呂に入るだけで温浴効果があります。温水プールで泳ぐのも同じ温浴効果があります。温水プールで歩くのもいいでしょう。浮力があるので膝に負担をかけず歩くことができ、効果的な筋力トレーニングができます。膝の体操をする
軽症の変形性膝関節症の痛みの軽減には膝の体操が有効です。予防にもなります。体重をかけずに筋肉を強くするのがポイントです。サポーターを使う
膝のサポーターは関節を支えるので歩くときに安心感があります。また保温機能があるので痛みが和らげられます。
-
変形性膝関節症の治療
薬の服用、リハビリテーション、それでも治らない場合には手術を行います。薬の服用
最初は消炎鎮痛薬などの内服薬、落ち着いてきたら湿布薬や軟膏などの外用薬で炎症を抑えます。リハビリテーション
運動療法(大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練など)、装具療法(膝サポーター、足底板など)、物理療法(温熱療法、電気刺激療法など)があります。手術
薬の服用や理学療法でも治らない場合、手術をします。関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人口膝関節置換術などがあります。
-
変形性膝関節症の予防
年をとってから膝が痛まないよう、若いころから脂肪を落とし、筋肉をつけるように努力しましょう。変形性膝関節症を予防するためには、膝の周囲の筋肉、とくに太ももの前にある大腿四頭筋を鍛えることが大切です。また、膝関節の動きをよくするため、膝のストレッチングも大切です。- 膝のストレッチング法
-
ひざの周辺の筋肉を伸ばすス卜レッチ
- 1.
- あお向けになり、片方の太ももの裏を手でかかえます。
- 2.
- かかえた足を痛みがない程度に胸に引き寄せ、5秒間止めます。
- 3.
- 動作1、2を5〜10回くり返し、反対側も同様に行います。
-
太ももの裏の筋肉を伸ばすス卜レッチ
- 1.
- 足を広げて座り、片方の足を曲げ、もう一方の足を伸ばします。
- 2.
- 背筋を伸ばしたまま、伸ばした足の方向に身体をたおしていきます。そのまま、10秒間止めます。
- 3.
- 動作1、2を5〜10回くり返し、反対側も同様に行います。
- 筋力トレーニング法
-
太ももの筋肉をつける足上げトレー二ング
- 1.
- いすに腰かけ、こぶし2個くらいの幅に丸めた夕オルを左右のひざの間に挟みます。
- 2.
- 3.
- ひざを伸ばした方の足をゆっくり上げて、床から10cmのところで5〜10秒間止めます。その後、ゆっくり下ろします。
- 4.
- 動作1、2を10回くり返します。
-
ひざの周辺の筋肉を鍛えるトレレー二ング
- 1.
- 足を広げて座り、片方の足を曲げ、もう一方の足を伸ばします。
- 2.
- 背筋を伸ばしたまま、伸ばした足の方向に身体をたおしていきます。そのまま、10秒間止めます。
- 3.
- 動作1、2を5〜10回くり返し、反対側も同様に行います。
-
筋肉も使わないと萎縮します。
人間は2本足で立つ動物ですから、重力に負けないで直立姿勢を保つ筋肉が必要なのです。ところが、痛みが出ると筋肉を使わなくなる。使わないと筋肉が落ちる。この悪循環を断ち切るためには筋力トレーニングが必要です。これは変形性膝関節症の予防にもなります。
それは骨も同じです。宇宙飛行士が宇宙で無重力状態の中にいると使わないから骨が萎縮します。地球に帰還すると重力があります。その中で歩く練習をしていくと骨が元の状態に戻ります。寝たきりの人は骨を使わないから骨が弱くなりますが、また歩けるようになると徐々に戻ります。人間の骨も動かすことが大事です。
-
- 資料提供
- 公益社団法人 日本整形外科学会
- エーザイ株式会社
- 科研製薬株式会社・生化学エ業抹式会社 変形性膝関節症の運動療法 おうちでできる簡単トレーニング